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歯周病治療

治療ポリシー

一般的に歯周病と一言でいわれていますが、実は一つの疾患ではなく、複数の原因が関係して起こる、歯周組織が破壊される症候群です。
主たる原因の一つはバイオフィルム(食物残渣や細菌)による再発性感染症で、全身の調節機能とも関係した免疫、遺伝子性疾患でもあります。
もう一つの大きな原因は、身体の他の感染症による炎症と異なって、口腔の特殊な環境が歯周組織に異常な咬合力、舌・口唇圧の影響を与える複合した問題があることです。
これらの原因の背景には、関連病因(糖尿病、肥満等)が関係する生活習慣が大きく影響していると言われています。

以前の歯周病治療は悪くなった歯周組織・歯牙は切除・抜歯が中心でした。
現在は、原因の除去療法、バイオフィルム(食物残渣や細菌)の除去、喫煙の禁止、関連病因(糖尿病・肥満等)の治療を行った上で歯肉組織・骨の再生をはかる治療へと進化してきました。
当院では、初期治療(バイオフィルムや歯石の除去)を行いながら、咬み合せの治療、正しい呼吸法の習得、正しい姿勢の獲得、生活習慣の改善指導、食事指導、禁煙指導を進め、患者さん自身の自然治癒力を高めながら、機能回復に足りない部位には、科学的な臨床評価に基づいて再生療法[エムドゲイン(スウェーデンで開発)とGEM21S(2005年アメリカで開発を認可)]を行っています。

治療終了後も1ヶ月~6ヶ月に一度個々の口腔内、全身のリクスファクターとライフステージに応じたプロフェッショナルケアーとしてのバイオフィルムを取り除くメインテナンスが重要です。

松崎ファミリー歯科矯正歯科では、歯周組織再生療法と治療後のメインテナンス(プロフェッショナルケアー)を重視しています。

歯周病とは?

歯周病(歯槽膿漏)とは、歯ぐき(歯肉)と歯の間の溝(歯肉溝)に、細菌が感染し発症する慢性の炎症性疾患で、感染症の一つです。

歯周病の仕組み初期段階では、炎症が歯肉に限局しておこっているため、歯肉炎と呼ばれますが、やがて炎症が歯の周りの組織に広がると、歯周炎へと進行していきます。

歯周炎になると、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けていきます。これを放置していると、歯肉から膿(うみ)が出てきたり、歯がグラグラしてきたりして、やがて歯が抜け落ちます。

歯肉炎では、歯肉は炎症のため赤く腫れていますが、歯槽骨の吸収はありません。一方、歯周炎では、炎症が歯周組織に広がるため、歯槽骨の吸収や歯肉の退縮が見られます。

歯周病は、細菌が原因としておこる病気ですが、その他にも全身的な要素、たとえば糖尿病、喫煙、年齢、体質などが発症・進行に大きく関わる複雑な病気です。

  • 健康な人の歯
    健康な人
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    歯周病患者

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歯周病治療

当院における歯周病の治療方針は、患者様の体質やリスクを考慮したオーダーメードの治療です。

歯周病の状態は、患者様ごとに千差万別です。それは、個々の患者様の体質が違うからであり、またその他のリスク因子が違うためです。異なる状態の歯周病に、同じような治療を行うことは理にかなっていません。当院においては、患者様のお口の中の状態や体質、リスク因子を考慮に入れ、なおかつ治療の予後を予想していきながら、患者様一人一人に見合った治療計画をオーダーメードで作成して治療を行います。そして治療後もその状態が長期にわたって維持できることを目標にしています。

当院で用いているリスク診断表

リスク診断表1

リスク診断表2

この患者様の初診時の歯周病のリスク値は50%で、高リスクです。高リスクの原因は、左の表のレーダーチャートから、炎症、局所因子、習癖、遺伝因子、そしてコンプライアンスが50%を越えて高いことであることがわかります。治療の結果、最終的に21%までリスク値は下がりました。この程度のリスクならば3ヶ月に1度程度のメインテナンスで、歯周病をコントロールすることは可能です。

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治療例

症例1:中等度歯周炎患者の治療例

患者
45歳、男性
診断
成人性歯周炎
所見
前歯部では、歯間が離開しており、唇側傾斜がある。全顎的に歯肉の炎症も著明である。レントゲンでは、全顎的に根の1/2程度の骨吸収がある。また一部には垂直性の骨吸収があり、第一大臼歯部は、根尖部まで吸収している部位もある。
治療方針
細菌の機械的除去を行うとともに,口腔清掃指導を行い再感染を予防する。同時に局所因子にも対応するとともに,歯周外科処置を行い,患者が細菌をコントロールしやすく,また再感染しにくい環境をつくる。
治療計画
歯周初期治療(TBI、SRP)
歯周外科処置(人工骨移植、GTR法等含む)
(上下顎左右臼歯部、上顎前歯部)
MTM(上下顎前歯部)
メインテナンス(SPT)

初診時口腔内写真・レントゲン写真

メンテナンス時口腔内写真・レントゲン写真

歯周治療を行うことによって、初診時にあった歯肉の発赤・腫脹はなくなりました。レントゲンにおいても、初診時は骨梁が不明瞭だったのが、はっきりとしてきました。治療が終了して、定期的なメインテナンスを行い始めて10年以上が経過していますが、現在でも特に大きな問題を起こすことなく良好な経過をたどっています。

症例2:薬剤の関与が疑われる中等度歯周炎患者の治療例

患者
61歳、女性
診断
薬剤の関与が疑われる成人性歯周炎
所見
全顎的に歯肉の増殖がある。特に左側下顎臼歯部は、歯冠を覆うほどの歯肉増殖がある。レントゲンでは、全顎的に水平的な骨吸収がある。また小臼歯部に垂直性の骨吸収がある。
治療方針
患者は、降圧剤、抗ヒスタミン薬を服用しており、このことが歯肉の増殖に関与していると考えたため、内科医と相談のもと、服用薬の変更、減量を行う。また、歯肉縁下の感染源の除去を行うとともに、局所的に炎症を助長させる局所要因を改善すること。
治療計画
薬剤の変更・減量
歯周初期治療(TBI、SRP、不良補綴物の再製)
歯周外科処置(左下臼歯部、上顎左右臼歯部)
MTM(左下臼歯部)
メインテナンス(SPT)

初診時

治療終了時

初診時にあった、歯を覆い隠さんばかりの歯肉の腫脹は、歯周治療と薬剤の減量・交換によってなくなりました。上下の写真を見比べたら、初診時にどれほど歯肉が腫脹していたか良く分かると思います。歯周治療が終わり、メインテナンスに移行した現在も、歯肉が腫脹することはなく、良好な経過をたどっています。

症例3:特殊なタイプの歯周病

早期発症型歯周炎(侵襲性歯周炎)
若年者に発症するタイプの歯周病です。歯周病が重症な場合が多いので要注意です。早期の徹底した歯周病治療が歯を保存するためにも必要です。
患者
29歳、男性
主訴
歯肉の腫脹、および咀嚼障害
現病歴
10代の頃から、歯肉腫脹を自覚していたが、特に歯周病の治療を受けることなく放置。20代になり疲れたときや体調が悪い時に歯肉が腫脹し,痛みを感じることが多くなった。歯が自然脱離し、物が食べにくくなったため、治療を希望して来院した。
全身疾患
特に無し
診断
早期発症型歯周炎

早期発症型歯周炎(侵襲性歯周炎)の写真

壊死性潰瘍性歯周炎
壊死性潰瘍性歯周炎の写真歯肉の糜爛(びらん)や潰瘍を特徴とする歯周炎です。原因不明だが、全身疾患や金属アレルギー、そしてストレスなどによる体調不良との関連が疑われています。糜爛や潰瘍のある部位を清潔にたもつことが大切ですが、金属アレルギーの診断がついた場合は、口腔内の金属の除去が必要になる場合もあります。
薬物性歯肉増殖症
薬物性歯肉増殖症の写真抗てんかん薬のフェニトインや、免疫抑制剤のシクロスポリン等を服用している患者に見られる線維性の歯肉増殖を主症状とする疾患です。また、降圧剤の中にも歯肉増殖を副作用とする薬剤があります。治療法としては、歯肉の外科的な切除が一般的です。

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歯周病Q&A

歯周病は治りますか?
はい、治ります。歯周病は治らない病気とか、一度歯周病になってしまうと歯が抜けるのを待つだけだと考えている人も多いかもしれません。しかし、歯周病は専門的な治療をきちんと行えば、必ず良くなります。ただし、慢性的な病気なので、歯周病が治るというのは、溶けた骨や退縮した歯ぐきが元通りに戻るという意味ではありません。歯肉の炎症をおさえて、歯周病の進行を止めることによって、病的な状態から健康な状態に戻すことが可能であるという意味です。
歯磨きをしっかりしていれば歯周病になりませんか?
“ はい”でもあり、“いいえ”でもあります。理論的には、歯磨きがしっかり出来ていれば歯周病にはなりません。しかし、このしっかりというのが曲者で、歯ブラシで歯周病の原因となる細菌を全て除去することは不可能です。そして、その磨き残した少しの細菌が原因で歯周病になってしまう人もいます。ただし、歯磨きがしっかり出来ていなければ、歯周病になる確立は高くなり、歯周病の治療もうまくいきません。
歯周病の進行に個人差があるのはどうしてですか?
歯周病の原因は細菌ですが、その細菌に対する反応には個人差があります。風邪をよくひく人もいれば、ほとんどひかない人がいるのと同じように、歯周病の進行度には体質(免疫力)が大きく影響します。また、体質以外にも歯周病に影響を与えるものには、喫煙や糖尿病、そしてストレスなど様々な要因があります。したがって、同じように歯を磨いていても、歯周病の進行度には個人差がでてきます。当院では、歯周病の検査とともに問診表に記入していただくことによって、患者様ごとの体質やリスクを調べて、それを治療に反映するようにしています。
歯周病は他人にうつりますか?
はい。歯周病は、歯周病の原因菌による感染症です。ですから、親子間、夫婦間、そして恋人同士の間でうつる可能性はあります。実際、口の中の細菌の遺伝子を調べると、近親者の間では、同じ型の遺伝子を持つ細菌が検出される頻度が高いようです。感染経路は、食べ物等の口移しやキスなどによるものが考えられています。しかし、細菌が定着するかどうかは、その人の持つ抵抗力やブラッシングの程度のよって違ってきます。しっかりお口の中のケアをしていればそんなに心配することはありません。
歯周病の検査は必要ですか。歯ぐきをチクチク刺す検査が嫌なのですが。
はい、必要です。きちんと検査をしないと、間違った診断をしたり、正しい治療が出来ない可能性があります。また、歯ぐきをチクチク刺す検査は、ポケットプロービングといって、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)測る検査です。この検査は、レントゲン検査だけでは分からない歯周病の進行状態を調べるために行う大切な検査です。また、この歯周ポケットを測ることによって、治療の効果を判定したり、今後の歯周病の進行を予測したりすることも出来ます。炎症が強い部分にこの検査を行うと、痛みが強い場合があります。あまり痛い場合は、炎症を少し抑えてから再度正確に検査する場合もあります。また、歯周病の検査は、治療のステップごとに何度か行う必要があります。
10代や20代で発症する歯周病があるって聞いたのですが。
以前は早期発症型歯周炎と呼ばれていましたが、現在は侵襲性歯周炎(1999年アメリカ歯周病学会の分類による)と呼ばれるタイプの歯周病がそうです。若年期から発症することを特徴として、家族性に発症する場合が多く見られます。そのため、遺伝的な原因や特殊な細菌感染が原因と考えられていますが、はっきりとしたことは分かっていません。治療を行わずにほおっておくと、早期に多くの歯を抜かなければならなくなります。もし、若い時から歯ぐきが腫れたり、歯がグラグラしてきた場合は注意が必要です。早めに相談してください。
煙草を吸っていると歯周病が悪くなりますか?
はい、煙草は歯周病の最も大きなリスク因子です。煙草を吸うことによって歯周病が2-8倍も悪くなることが知られています。煙草を吸っている人の歯ぐきは黒ずんでいますが、腫れや歯肉からの出血は少なく、見た目にはあまり歯周病が進行しているようには見えません。しかし深部では歯周病が進行している場合が多く注意が必要です。歯周病に与える影響は、1日の喫煙本数が多いほど、また喫煙期間が長いほど大きいことが分かっています。禁煙するのは難しいにしても、少しでも本数を減らすことができれば、歯周病に与える悪影響は少なくなります。努力してみてください。
歯周病を治療すると糖尿病が良くなるって聞いたのですが、本当ですか?
はい。重症の歯周病にかかっている人は、常に歯周組織で炎症が起こっています。この炎症組織で細菌から産生される毒素(LPS)や免疫担当細胞から産生される生理活性物質(TNF-α)が、インスリンの働きを悪くすることが知られています。したがって、重症の歯周病を治療することは、インスリンの働きを良くすることにつながり、その結果、血糖コントロールが改善することが考えられます。
歯周病が他の全身疾患に悪影響を与えると聞いたのですが本当ですか?
はい。歯周病は、慢性の炎症性疾患です。28歯全ての歯に6mm程度の歯周ポケットがあると仮定した場合、生体は約72cm2の潰瘍を有していることになります。細菌や歯周組織で産生される生理活性物質( TNF-α、IL-6等)は、この広い潰瘍面を通じて生体の中に取り込まれて、血流に乗って全身へと広がっていきます。つまり、歯周組織は、生体を慢性的な不顕性感染や炎症状態に置く原因の供給源になっていることになります。近年では、歯周病は、心臓血管系疾患、糖尿病、呼吸器系疾患、消化器系疾患、そして早産や低体重時出産に悪影響を与えることが分かってきています。すなわち歯周病を治療することは、お口の中の健康だけでなく、全身の健康にも寄与することにつながります。
歯周病に効果のある薬はありますか?
残念ながら、ありません。歯周病は細菌による感染症です。したがって、原因となる細菌を取り除くためには抗生物質の使用が最も適当かもしれません。しかし、口腔内には500種類とも言われる細菌がいます。その中で歯周病の原因菌と考えられている細菌は10種類以上います。そのため、これら全ての細菌に効果のある抗生物質は存在しません。仮にあったとしても、細菌を0にすることは不可能です。一次的に少なくなっても、細菌はまた増えてきます。増えてきた細菌に対して、また抗生物質を使うというのは、耐性菌の問題があるので好ましくありません。ただし、治療の過程において一時的に抗生物質を使うことはあります。
歯周病の原因菌を除去するためにはどうすれば良いのですか?
一時的に抗生物質で細菌を減少させても必ずまた増えてきます。したがって、歯周病の原因菌を除去するために最も効果的な方法は、機械的に除去することです。すなわち日常的には、ブラッシングであり、専門的には歯科医院で行う治療です。ブラッシングは主に歯ぐきの上の部分の機械的清掃を、歯科医院での治療は歯ぐきの下の部分の機械的な清掃を行います。
歯周病で溶けた骨をもとに戻すことが出来ますか?
はい、条件が整えばある程度元に戻すことは可能です。その術式には、人工の骨や他の部位から取ってきた自分の骨を移植する方法、GTR(歯周組織再生誘導)法、そしてエムドゲインを使った再生療法などがあります。それぞれ一長一短があり、一概にどれが優れているとは言えませんし、また保険が利かないものもあります。当院では、いずれの術式を行うことも可能ですので、相談してみてください。
治療が終わったらもう予約をとらなくてもいいですか?
いえ、そんなことはありません。歯周病がひどい状態から良い状態にするのは、治療を行えば必ず出来ます。しかし、これより難しいのが、良くなった状態を維持することです。そのため、治療が終了した後でも、少なくとも3ヶ月に1度程度は来院して、チェックを受けたり、お口の中のクリーニングをしなければなりません。当院では、定期的なチェックをSPT(Supportive Periodontal Treatment)と呼んで、歯周組織の健康や、お口の中の健康を保つために積極的に行っています。お口の中の細菌を0にすることは不可能なので、定期的に細菌の量を減らすことが必要です。一生自分の歯で噛むためには、治療を受けることはもとより、定期的に歯科医院に行きチェックを受けることが、お口の中の健康を保つためには大切なのです。

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